実走レポート

CyclingReport 2021.03.24

他では味わえない「激坂」制覇の達成感と爽快感

地蔵峠展望台

JR木曽福島駅前にて、土産屋と食堂を経営してます川合と申します。 趣味の自転車が縁で、イナーメ信濃山形自転車倶楽部の仲間に入れて頂きまして、このイナーメが更なる縁となって、木曽おんたけサイクリングワールドに投稿させて頂くことになりました。

身長169.5cm、体重90~88kgの紛うことなきメタボな豊満ボディで、乗れば折れそうなロードバイクに跨がる姿は、「熊の曲芸」と揶揄されておりますが、「下手の横好き」ならぬ「デブの坂好き」でもありまして、四方を山に囲まれた中、あちこちの峠をヒ~ヒ~言いながら登るのを楽しみにしている、おデブなローディであります。

自分の住まいが木曽福島駅前なので、私のレポートの起点は木曽福島駅スタートとなりますので、予めご了承ください。あと、木曽おんたけサイクリングの注意として、山道には短いトンネルがちょくちょく出現します。大抵はトンネル内の照明もありますが、安全の為に、ヘッドライトとテールライトは常備してください。

さて、今回は木曽おんたけサイクリングのメイン・ルート『木曽福島~地蔵峠~開田高原 』をご紹介致します。駅舎を背に、右側の坂を下ると、木曽福島の市街地になります。宿場町が川沿いに広がって、今の街になった経緯があるので、木曽川に沿って南北に長い街並みですが、昭和初期に町中が燃えちゃう大火があって、福島の宿は、妻籠宿や奈良井宿のような、江戸情緒のある昔の建物は、残念ながら、ほとんど残ってません。

中心市街地は、路肩も狭く、クルマもそこそこ多いので、街を早めに抜けて、川向こうの道へ出ちゃうのがお勧めです。川を渡ると、対岸に崖屋造りの街並みが見られますよ。街を抜けると、小さな池みたいなダム湖畔(黒川ダム)を過ぎて、国道361号に入ります。

国道361号を行くと岐阜県境を越えて、野麦峠の入り口をかすめつつ、飛騨高山まで続いてますが、木曽福島スキー場入り口にある新地蔵トンネルが、ロードバイクには鬼門になってまして、トンネル内の路面に縦溝が掘られていて、28c以下の細いタイヤだと、ハンドルを取られて転倒する危険がある上に、センターライン上にポールが立っていて、クルマが路肩の自転車を避けることができず、非常に危険です。なので、新地蔵トンネルの自転車での通行は原則禁止!木曽福島から開田高原に抜けるには、旧道の地蔵峠を使います。

国道361号は、平均3~5%の緩い傾斜が続きますが、『二本木温泉』という日帰り温泉を目指して、R361を左折すると、旧道=地蔵峠に入ります。頂上まで8kmの地蔵峠は、このコース最大の難所です。最大斜度15%、平均斜度は10%を超えますが、『唐沢の滝』までは、所々緩やかな箇所があるので、比較的登り易いと思います。

九蔵峠

心折れそうになる傾斜 歩けば心地よい森林浴お散歩ルート

勝負は、滝の始まる、上流部から!沢沿いに真っ直ぐ登る、直登坂は、ず~っと10%超えの傾斜が500mぐらい続きます。初めて登ると、ここで心が折れそうになるので、ドMの変態的な坂バカの皆さん以外は、迷わず、自転車を降りて押して歩きましょう。歩く分には、涼やかな渓流の音と、鳥の囀りを聴きながら登る、森林浴お散歩ルートですから。

この直登坂を過ぎて、カーブが連続するエリアに来たら、頂上まであと1kmぐらいです。傾斜の緩いS字カーブが見えたら、その先に、頂上のお地蔵さんが見えて来ます。…ただ、地蔵峠の頂上は、木々に囲まれた薄暗い森の中なので、良い景観とは言えません。頂上から300mほど下ったところに、地蔵峠展望台がありますから、休憩は、この展望まで行ってからにしましょう。

木曽福島から来ると、この展望台の辺りから、気温が3~5℃ぐらい下がります。夏に来ると、ヒヤ~ッとして気持ちいいですよ。この地蔵峠を越えてしまえば、後は、木曽的に言えば「ほぼ平坦」です(都会の人からは「嘘つけ、どこが平坦じゃ!」と怒られますが、、)。

地蔵峠を開田高原まで下って再び国道361号に入ると、開田高原アイスクリーム工房や、新鮮な手打ちそばを食わせる名店の数々があって、観光サイクリングには最高のロケーションになります。R361には、九蔵峠という、もう一つの峠がありますが、地蔵峠の激坂を越えた後では、「地面がちょっと腫れてる」程度で、なんてコトないです。

ただ、最近の九蔵峠は頻繁に工事してて、九蔵峠の展望台から先の西野地区まで行けない事が多いのですが、運良く西野まで抜けられると、開田高原1周コースを走ることになります。

文字通り、御嶽山の裾野を巡るサイクリングは最高に気持ちいいですよ~。

20km近く続く高原の下り 「漕がずに進めるって幸せ~」

西野からR361を県道20号へ左折すると、ここからは、三岳までずっと下り基調になります。県道20号沿いには、マイア・スキー場やおんたけロープウェイスキー場、倉越パノラマラインなど、最大傾斜20%超えの激坂登坂ルートが山ほどありますが、それらのルートは、変態坂バカ諸兄の為に、また別の機会とさせていただいて、ノーマルなサイクリストは、重力に身を任せて、「漕がずに進めるって幸せ~」と、高原ルートの下りを楽しみましょう。ただし、晩春の5月や初秋の10月にここを走る時には、フルフィンガーのグローブと、ウィンドブレーカーを忘れずに。20km近く下りが続くので、身体が冷えちゃいますよ。

県道20号を下って、道の左手の下に丸い石球が置かれた『太陽の丘公園』が見えて来たら、旧三岳村の中心街になります。御嶽教の若宮神社が隣接してます。この先、黒沢の交差点を右折すると、王滝村へ上がる、県道256号線になりますが、開田高原を1周回った後、ここを登るには、中級者以上の脚力が必要になりますね。王滝までは、傾斜こそ10%を超えない程度で、サラ脚(疲労してない脚力)なら問題なく上がれますけど、地蔵峠~九蔵峠の後だと、実質、平地を100km弱走ったぐらい、脚力が削られてますから…。

というワケで、我々ノーマル・サイクリストは、黒沢交差点を左折して、県道20号で、道の駅 三岳を目指します。道の駅 三岳は、小さな道の駅ですが、自家製のお弁当やおにぎりを販売してて、地元では人気のスポットでもあります。…ただ、夕方、早めに閉まっちゃうんで、お買い物はお早めに。

道の駅 三岳を過ぎると、2つ、3つ短い登りがありますんで、実は、開田高原からの下り坂を、無闇にペダルを踏んで、脚を使ってしまうと、この短い登りで地獄を見るハメになりますよ~。私は、開田高原からの下りで、「最高速チャレンジだ!」って、アウタートップでギャインギャインに踏み倒したせいで、帰路の登りで、脚が吊って、死ぬほどキツかったコトがあります。

県道20号を進み、川合トンネルという私とは縁もユカリもない、同名のトンネルを抜け、トーエネックの社屋が見えたら、左折します。…直進すると、木曽谷を貫く大動脈の国道19号ですけど、ここは交通量が多い上に、路肩スペースがほぼゼロで、車道を自転車で走ると、非常に危険なので、木曽おんたけサイクリングにおいて、国道19号への進入は、原則禁止です。

県道20号を左折すると、山沿いを抜ける、舗装林道みたいな狭い道、町道『川合中畑線』になります。国道が通る前(昭和の始めか、大正時代?)は、この舗装林道が木曽を抜けるルートだったらしいです。それを思うと、木曽がどれだけ辺鄙な場所だったか?が偲ばれます。

細い道を抜けて、下り坂を下ると、右手にアーチ型のコンクリートの橋が見えます。この橋を右折して、信号を直進、最後の坂を登ると、木曽福島駅にゴールです。西野地区まで回って、走行距離は55km、メタボな私のペースで走って、おおよそ3時間半ぐらいで回れるコースです。

開田高原「そば処まつば」前

蕎麦やアイスクリーム、絶景の写真撮影…1日遊べるルート

要所要所で休憩して、お蕎麦食べたり、アイスクリーム食べたり、写真撮ったりして回ると、1日遊べるルートでもありますね。脚力としては、平地で100km走れる方なら、余裕で回れるかと思いますが、平地で50km程度の方だと、かなりハードな挑戦になるかと。

冬のオフシーズンに、自転車にも乗らず、食っちゃ寝を繰り返した私が、5月のシーズン始めに、ここを走ると、毎回、疲れ過ぎて、最後の駅坂で意識が飛びそうになり、翌日、寝込みます。でも、激坂=地蔵峠を登り切った時の達成感と、その先の、開田高原の景観を目にした時の爽快感は、ちょっと他では味わえない魅力がある、木曽おんたけサイクリングの、自慢のルートでもありますんで、ぜひ、挑んでみてください。

最後に、私の店のサイト『木曽チャリ!』(http://kisochari.net/cycling_guide.html)にも、お勧めサイクリング・ルートをアップしてありますんで、実走レポート・ブログと合わせて、ご利用頂ければ幸いです。

川合克巳(かわい・かつみ)

川合克巳(かわい・かつみ)

1966年、長野県木曽福島町(現・木曽町)生まれ。ダイエット目的でロードバイクを始め、2008年からイナーメ信濃山形自転車倶楽部に所属。レースやイベントなどを主催する「イナーメ木曽プロジェクト」の事務局を務める。JR木曽福島駅前で土産屋「かわい商店」と食堂「食事処かわい」を経営。サイクリスト向けに補給サプリ、ボトル、レインジャケット、タイヤ、チューブ、CO2ボンベなどを用意。工具やフロアポンプ(空気入れ)の無料貸し出しも行っている。駅前スタート駅前ゴールの輪行サイクリストには、無料で着替えスペースと荷物置き場を提供中。

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